2020年までに、USJが『任天堂マリオランド』をパーク内に増設します。
かつてハリーポッターエリアを建設した際、かかった費用はなんと400億円。
これは年間売上の半分以上に相当する額であり、経営陣は誰もが反対したといいますが、ハリーポッターエリアのおかげで低迷していたUSJの客足はV字回復しました。
絶好調の今、ハリーポッターと同額に近い費用をかけて増設するという『マリオランド』。
なぜ今、マリオなのか?
なぜ任天堂と組むことになったのか?
今回は、USJが任天堂エリアを作らなければならない理由を紹介します。
ゲーム業界で苦しんでいた任天堂
かつての任天堂は、ファミコンとスーパーファミコンをヒットさせ、まさしくゲーム会の帝王と言える存在でした。
ゲームソフトを出すためには、ファミコンやスーパーファミコンで販売させてもらわないと、誰も遊ぶことができません。
ですから、ゲーム会社たちは任天堂に扱ってもらうべく、ご機嫌伺いと営業努力を続けてきたのです。この時の苦しさを語っているゲーム会社社長さんは今も数多くいます。
しかし、ソニーが任天堂とケンカ別れし、「それならうちでハード作りますよ」と言い出してからすべてが変わりました。
ソニーが販売したプレイステーションは世界的に大ヒットし、ついに任天堂を食ってしまうところまで成長したのです。
任天堂が販売した『ニンテンドー64』などはいまいち振るわず、いよいよゲーム機メーカーとして厳しい状況が訪れました。
ソフトが売れればいいゲーム制作会社と違い、ゲーム機を制作しているニンテンドーにとって、ハードが売れないことは死活問題だったのです。
天才岩田社長
任天堂の社長に就任した岩田社長は、もともとゲーム大好き少年であり、天才プログラマーでもある人間でしたが、あまりの有能ぶりに経営の仕事を任されると、運営までできてしまうという正に天才的な存在でした。
岩田社長が新しく打ち出した、「ゲーム離れした人にもゲームを」というコンセプトで作られた『Wii』と『3DS』は世界的ヒットを記録します。
人気が低迷していた任天堂を復活させ、新しいゲームブームを創りだしたのです。
岩田社長はすでに病に倒れられてしまいましたが、遺作として残したのが、現在世界的にヒットしている『ポケモンGo』。
これだけを見てもいかに素晴らしい人材だったかが分かります。任天堂にとって岩田社長はなくてはならない存在でした。
そして岩田社長もずっと悩んでいたのが、スマートフォンというゲーム業界の大きな敵だったのです。
任天堂の倒し方知ってる?
スマートフォンが若者に浸透すると、もはや若者たちはゲーム機を引っ張りだしてゲームをするということがなくなりました。
スマートフォンのアプリは課金前提のゲーム要素が少ないゲームが多かったのですが、これは人を夢中にさせる魔力を持っていたのです。
それは、友達に勝ちたいとか、いいカードを手に入れたいとか、人間の根本的な欲求に関わる部分で、こればかりはそうそう拭い去れるようなものではありません。
グリーやモバゲーは全世代にブームを起こし、『Wii』『3DS』で回復した任天堂の人気はまた失墜していきました。
任天堂を退社した社員がグリーの面接を受けたところ、若い面接官に「任天堂の倒し方知ってる?」とからかわれた話は非常に有名ですが、このころ時代は変わりつつありました。
お金をかけずとも、一度買ったら最後まで楽しめるものがゲームなのか、際限なく課金して遊ぶ競争がゲームなのか、世間の出した答えは皮肉にも後者だったのです。
任天堂は、決してスマートフォン業界には進出しないと決めていたため、みるみるうちに衰退していくことになりました。
アトラクションの世界へ
任天堂は飽くまでも、『楽しんでもらうことこそがゲーム』と考えてきたため、スマートフォンアプリを製作することではなく、更に新ゲーム機『NX』を開発することを決めたのです。
また、それと同時に、アトラクション開発を作るべく、海外企業であるNBCユニバーサルと提携。NBCユニバーサルの子会社のコムキャストがUSJを買収したため、USJで任天堂のアトラクション展開が決まりました。
ゲーム機は1台でも多く売れなくてはなりませんが、アトラクション製作はその先駆けとなってくれるはずでした。
更にここで岩田社長の遺作が追い風を吹かす形になります。
『ポケモンGO』、空前絶後の大ヒットへ
任天堂はずっとスマートフォンで課金アプリを出すことをしぶっていましたが、ついに、『課金せずとも楽しく遊べるスマートフォンアプリ』という形で最終的な答えを出しました。
こうして発表された『ポケモンGO』は、課金アイテムを買わずとも十分に遊べるというゲームの魅力を損ねないものであり、課金自体もギャンブルのようにたくさんできない仕組みになっています。
『10連ガチャ3,000円』を何度も引かなければ友達に勝てないスマホアプリが多い中、控えめな選択ですが、『ポケモンGO』は世界的に大ヒット、任天堂の株価を急騰させ、もはや任天堂のスマートフォン参入を失敗だという人は誰もいないような状態です。
任天堂を支える最大のアトラクション製作
飛ぶ鳥を落とす勢いに復活した任天堂。
さらにここで攻めの姿勢で展開するアトラクションは、多くの人々に楽しく遊んでもらう中で、任天堂を愛してもらうための最大の切り札でもあります。
また、それは同時にUSJにとっても最大の切り札に成り得るものでした。
なぜなら、日本人はそれほどハリウッド映画が好きではないからです。
特にテーマパークを重点的に利用する家族連れなどは、ハリウッド映画で遊びたくて来ているのではありません。
『子どもを楽しく遊ばせたくて来ている』のです。
USJは当初ここに気づかず、低迷期をおくることになりましたが、『家族向け』路線に切り替えてからは、徹底して日本のキャラクターを多用したイベントを行っています。
世界でヒットしているのは間違いなくハリウッド映画です。しかし日本の家族連れが求めていたのは、子どもが楽しい思いをすることであり、それには子どもに愛されているキャラクターが必要不可欠だったとも言えるでしょう。
USJ、任天堂、どちらも絶対にほしい『マリオランド』
USJと任天堂、偶然にも両者の利害は一致し、「家族向けのために日本の人気キャラクターやメディアを展開したい」USJと、「任天堂のゲーム機を長く支えるための柱が欲しい」任天堂が、絶対に作らなければならないアトラクションとして生み出すのが『マリオランド』です。
ですから、ハリーポッターと同額レベルの400億円を投資したとしても、それは両者にとって決して高い金額ではなく、むしろ当然の値段だとも言えるでしょう。
ハリーポッターと同じ、もしくはそれ以上に楽しんでもらえないと意味がないのです。
ですから、これから開発される『マリオランド』は、知恵のすべてを尽くした最大級のアトラクションエリアであるはずです。
どのようなアトラクションが生まれるのか
最後にアトラクションの予想をすると、任天堂には数多くの活かせるライセンスが多いことから、どのようなエリアでも建設することが可能です。
マリオカートなどは世界的な人気があり、カートで走れるだけで来場者は増えていくでしょう。
しかし、今回増設されるエリアは、クルーたちの控室などをすべて潰した上で作られる、決して無駄遣いの許されない最後の増築エリア。
カートコースなどを作ってしまうと、多くの敷地を潰されてしまう上に、すでにUSJに存在するエルモのカートとかぶってしまいます。
ですので個人的な予想では、エリアのスペースを有効活用しながら、かつマリオの世界を存分に楽しめる、バーチャルライド系が多くなるのではないかと読んでいます。
実際、本物のカートコースでは赤こうらすら投げることが出来ませんが、バーチャルライドならすべてが可能になります。
もしもマリオ以外のライセンスも使用する『任天堂総合エリア』になるなら、その可能性は無限大で、『ポケモン』や『ゼルダ』など、ゲームファンにとっては日本中のどこよりも楽しめるゲームエリアになることでしょう。
『マリオランド』に期待していいのかどうかという問いには、自信をもってこう答えられます。
USJも任天堂も、どちらも決して失敗できない、絶対に成功させなくてはならない最大の投資であるからこそ、必ず誰もが楽しめるものになることは間違いありません。
かつて、今のお父さんやお母さん世代を『ファミコン』『スーパーファミコン』で楽しませてくれた任天堂が、いまや親子含めてアトラクションで楽しませてくれる。
ぜひ期待して2020年までの運行を待ちましょう。